「フランケンシュタインの誘惑~科学史 闇の事件簿~」 と 「現代の事件簿・・・」

先日、実家でテレビを見ながら夕食を食べていた時

NHKのBSプレミアムで 「フランケンシュタインの誘惑~科学史 闇の事件簿~」という番組が放映されていました

この番組は、科学の歴史を変えた発見の陰に埋もれた「闇の出来事」をテーマにしたもので

放送は不定期、ナビゲーターは吉川晃司さん、司会は武内陶子アナウンサー

今回は 「放射能 マリーが愛した光線」 というタイトルで

「キュリー夫人」の名で有名な、物理学者マリー・キュリーのお話


マリー・キュリーは夫ピエールと二人三脚で放射能を発見し、女性初のノーベル賞を受賞

しかも、ノーベル物理学賞と化学賞、二つを受賞したのは彼女一人だけ

何物にもよらず、自らエネルギーを発するラジウムの発見は、それまでの科学の常識を覆し

「核の時代」 の扉を叩くものでした

マリーは、ラジウムが発する青い光にうっとりして

ずっと眺め続けているほどラジウムに魅せられ

そして、そのラジウムでやけどをしたことから

ラジウムは細胞を壊すのだから、癌細胞も殺すことができると考えるようになり・・・

そうなると科学者としての知的欲求を止めることはできず・・・

益々研究に没頭することに



ところが、最初のノーベル物理学賞受賞から3年後に、夫が馬車に轢かれて即死

その後マリーはまるで人形のように感情のない人間になってしまい

放射線だけに執着するようになったのです



一方、世の中はラジウムブーム

ラジウムによるがん治療、ラジウム化粧品、ラジウムウオーター

そしてラジウム時計・・・

これはラジウムの自然発光を利用して、文字盤を光らせた時計

ラジウム時計の工場では、若い女性が筆で文字盤にラジウムを塗っていて

その時に筆先を舐めていたため、ラジウムが顎の骨に沈着

顎の骨の腫瘍で多くの女性が亡くなったのです

彼女たちは 「ラジウムガール」と呼ばれていました


その後この事件は訴訟となり

工場跡地の除染には10年の月日を費やすことになったのです



そしてマリーの身体もラジウムにむしばまれていて

貧血、疲労、指先のただれが・・・

でも、彼女はその指のただれは、科学の先端で働いている者の勲章、と考えていて


放射能も自分が産んだ子供だから、それを守るためには自分のすべてをかける、、とまで言っていました

ラジウムの良さに傷をつけたくなかったために、その危険性を認識しながら、それを隠していたのです

実際、彼女の身体には、肝臓腎臓障害、貧血、白内障、耳鳴り、ふらつきなどの症状がみられており

彼女自身もそれがラジウムのせいかもしれない・・・、と思っていたのです

1934年7月4日、放射線被ばくによる再生不良性貧血でマリーは66歳で亡くなりました




マリーは自分の発見が世界を良い方向に導くと信じていたけれど

結局は 「きのこ雲」 になってしまい

人類はその力を制御する術を未だに身につけていないのです


パリの博物館にあるマリーの研究ノートは、放射能を浴びているため

マイクロフィルムによる閲覧のみが許されており

直接目にすることはできない、とのことです・・・


それがすべてを物語っているような気がしますね・・・



こうしてみると、科学者は唯我独尊

自分の発見のプラスの部分だけを発表して、マイナスの部分を無視する・・・

これは科学の問題点です

科学者にとっては、実験の協力者と同時に、定期的に批判してくれる人が必要で

マリーにとって夫がその人だったけれど

夫が亡くなってからは、彼女を止められる人は誰もいなくなったのかもしれませんね



ところで、マリーの後に続いた女性物理学者、りーぜ・マイトナーは

同じく放射性同位元素を発見して

ノーベル賞候補に挙がったけれど、結局は受賞できませんでした

彼女は常に放射線の危険性に注意を払っていたので

良い部分だけをアピールすることができなかったのでしょうか・・・

それと、目立つことが好きではない女性だったらしいです・・・




ということで、この前のBSプレミアムの内容を簡単にまとめてみましたが・・・

私がこの番組 「フランケンシュタインの誘惑~科学史闇の事件簿」 を初めて見たのは

今年3月21日春分の日

祝日で仕事が休みだったので、何気なくテレビをつけたまま雑用をしていた時



その日のテーマは 「”不死の細胞” 狂想曲事件」

主役は フランスの外科医 「アレクシス・カレル」 

「血管縫合および臓器の移植に関する研究」 で1912年にノーベル生理学・医学賞を受賞


カレルは、いつでも臓器移植ができるように、常に臓器をストックしておくために

臓器を永遠に生かしておく実験をしていました

ニワトリの胚の心臓の一部を培養したのですが

カレルの時代は抗生物質がなかったため、細胞を生かし続けるために無菌状態を保つ必要がありました

当時は黒い色が菌の汚染を防ぐと信じられており

カレルは真っ黒な手術着を着て、天井や壁も黒く塗りつぶしてしまい

とりつかれるように培養実験を繰り返しました

このストイックさが科学者ですねぇ・・・



細胞の培地に老廃物が溜まることが細胞の死因になると考え

体液に似た成分の液体で細胞を洗浄して、それをまた新しい培地に移し・・・

それを3日ごとに繰り返し・・・

その結果、それまで数日で死んでしまった細胞が3か月分裂を続け

老廃物を取り除けば、細胞の老化は防げる、とカレルは確信したのです

永遠の命は不可能ではない・・・

「不死の細胞」の誕生の瞬間でした



そして 血管縫合と臓器移植でノーベル賞を受賞したことで

カレルの「不死の細胞」も世界的に知られることとなり


「永遠に死なない」 「不老不死」 の細胞に世界が熱狂しました



一方で、他の研究者も「不老不死」の細胞を培養しようとしたけれど、誰も成功せず


1944年カレルが71歳で亡くなるとともに、培養細胞は助手の手で捨てられ

「不死の細胞」 は消滅しました



それでも、細胞は永遠に生かし続けることができる、という説は

カレルの死後も科学者の定説になっていました

多くの人が 「不死の細胞」 の魅力に取りつかれていたのかもしれません



その後、1961年 レオナルド・ヘイフリックが

カレルの「不死の細胞」は誤りで

細胞分裂の回数には限りがあることを発見し

それは 「ヘイフリック限界」 と呼ばれています


その論文を投稿した時は、掲載を拒否されたけれど

その後ヘイフリックの説を肯定する論文が発表されるようになり

「ヘイフリック限界」 が科学の新たな定説になりました



「死はすべての人にとって避けられない、我々は永遠に生きられない、細胞と同じです」

というヘイフリックの言葉が印象的です



不死の細胞は何だったのか・・・

別の細胞が混入したのか・・・

助手が不正な操作をしたのか・・・

真相はカレルの死によって永遠の謎として残されたまま


この騒動は科学の歴史に何を残したのか・・・



なんとなく 「STAP細胞事件」 が思い出されますねえ・・・



科学にとって大事なことばは 「批判的な吟味」

実験が成功した時点で終わりではなく

そこから、実験の成功を批判的な目で見ながら実験を再現する、という事が大切

その意味では、本人でさえ再現できなかったSTAP細胞は

やはり現時点では存在しなかったと言わざるを得ないですね

勿論、今後誰かが再実験に成功する可能性がないわけではありませんが・・・




ところで、その後、細胞分裂には限界があるとした「ヘイフリック限界」も

完全ではない、という研究がなされました




科学は定説を否定するためのもの

常に、今の定説は間違っている、という事を前提に研究をしているような気がします


そして、その新しい説を守るために、陰の部分を隠したい、と思ってしまうこともあるのかもしれませんね



私が医者になって30年あまり

そんな短い期間でも、医学の常識は大きく変わっています

極端に言いうと、正常と異常の境界でさえ変わっていますねぇ

治療方法も、今日の常識は明日の非常識・・・、なんてことも

なので、新しいものが発表された時も、私はどうしても懐疑的になってしまいます・・・



医学以外の身近なところでは、

例えば、いろいろなダイエット法が注目されては消え・・・

美容についても同じですね・・・

食の常識だってそうです


私は、なるべく流行には振り回されないようにしたいと思ってます

一つのものに固執するのは危険な感じがしますねぇ

常に疑ってしまうのは、リケジョの悲しさでしょうか・・・




でも、リケジョとしては、やっぱり科学は面白いですねぇ


科学は誘惑する・・・


定説を覆したい、という誘惑にとらわれるのは、科学者の性ですねぇ・・・



ノーベル賞は勿論素晴らしいけれど

多くの研究者のうち、その研究が日の目を見るのはごく僅か

でも、報われなかった研究があったからこそ、大発見をなし得ることができた、

そのことを私たちは忘れてはいけないですね



理系にとって生きにくい世の中だけど・・・


科学者、研究者のみなさんが研究に専念できる環境に恵まれますように・・・


そう願わずにはいられません


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この記事へのコメント

気仙のまっさん
2015年12月19日 09:53
おはようございます。科学と物理が苦手で文系を選んだものからしても興味をそそるお話でした。この手のお話大好きです。今までの常識が非常識になり、非常識だったことが常識になる。しっかりした自分を持って永遠に変わらないもの、変わって欲しくないものを探して生きたいものです。お身体を大切にご活躍ください。
ばぶこ
2015年12月19日 21:12
今年も沢山の面白いお話有り難うございます。
私は研究者ではありませんが、日常にもこれってどうなるんだろ…?知りたい!ということがいっぱいありますよね~
例えば岩手のがんづきという蒸しぱん、重曹と酢を使うと上手く(旨く)出来たり。卵も使い方で色々な食べ物になる…このあたりは化学反応ですかね~

暖冬ではありますが、来年は盛岡に来られる機会も増えそうとか…
ご自愛ください。
ほのぼの
2015年12月20日 16:01
気仙のまっさんさんコメントありがとうございます
興味をもって見てくださってありがとうございます。
私は理系の中でも数学が好きで、津田塾大学数学科にいきたい、と思っていた時期もありました。
でも物理が苦手で、大学の物理の試験は大変でした
でも、物理や化学の話題は今でも大好きで、この手の番組はなるべく見逃さないように・・、と思っていたので、今回は偶然見ることができてとても興味深かったです

本当に医学や科学の進歩は素晴らしいです。
それはすべて日々たゆまぬ努力を続けている研究者のおかげですね。
でも、突然常識が変わることにはなかなかついていけません。
特に若返りとか不老不死なんて言葉が出てくると、人はその裏の不利益から目をそむけたくなります
この番組はそんな心理に警鐘を鳴らしてくれたような気がして、ブログに載せてみました
テレビも含めて社会の中で耳に入ってくる情報から、真実を見極めるのは難しいかもしれませんが、まずは鵜呑みにしないことが大切な気がします。
他人を変えることはできませんが、自分が変わらずにいることは可能です。
本物を見極める力をつけていきたいですね
ほのぼの
2015年12月20日 16:11
ばぶこさんコメントありがとうございます
今年もブログをご愛読くださってありがとうございました
日常のなかでも興味深いことは多いですよね。
特にお料理は科学だと思っています
調味料を入れる順番で味も変わりますし、素材の柔らかさも変わってきます。
それも浸透圧や化学反応が関係しているのでしょうね。
そんなはてな?を解決していくと、きっと楽しいとおもいますよ{%顔文字喜びhdeco%

来年は同門会の50周年で盛岡に行こうと思っています。
最近、盛岡でのつらい思い出が薄れて、楽しいことが思い出されるようになってきました
素敵な街です

来年もまたよろしくお願いします
太朗冠者
2015年12月21日 07:05
生老病死
ほのぼの
2015年12月22日 00:57
太朗冠者さんコメントありがとうございます
生老病死、生まれること、老いること、病気になること、死ぬこと、人が免れることができない四苦ですね。
でも、不老不死が本当に幸せなのか・・・。
限られた人生だからこそ、愛おしいような気がします
太朗冠者
2015年12月22日 07:04
カフェ中毒にて死亡者でましたね。アルコールと同じでカフェに強い人弱い人がいるのかな?
アルコールなら酔っ払っるからわかるが ?
また昨年と、同じ非売品の手帳送りました。
シンガポール航空手帳やエールフランス手帳非売品もありましたがカレンダーのフランスやシンガポールの祝日が掲載してますので
避けました。
ほのぼの
2015年12月23日 12:58
太朗冠者さんコメントありがとうございます
いつもお気遣いいただきありがとうございます
貴重なお品、楽しみにしています

カフェイン中毒で亡くなった方が出たのは悲しいですが、その可能性はあると思います。
私の父はコーヒーを飲むと動悸があるので飲めない体質でした。
カフェインは強心剤としても使われる薬ですから、飲める人でも過量摂取は命にかかわります。
しかも、コーヒー以外の飲み物や食べ物にも入っているので、知らない間に重複して摂取している場合があります。
コーヒーや緑茶には長寿の効能がある、ということが話題になってから飲みすぎの人が増えています。
泌尿器科系の病気にとってカフェインは害になりますので、泌尿器科の患者さんが増えているような気がします
泌尿器科の病気は生活習慣病が多いので、私はいつも生活指導を中心にしています。
なるべくお薬を飲まなくても良くなるように患者さんに頑張っていただいています。
何事もほどほどに・・・、ですね。
それだけで長生きができるものや、健康になれるものなんてあるはずがありませんし、命を縮めてまで摂らなければいけない物なんてないと思いますが・・・。

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